Phantom
Visual Art Series
year : 2021 -
幽霊や幻などの意味を含むPhantom(ファントム)という言葉でまとめられた、さまざまな妖怪の絵。
一見すると薄気味悪さが目立つ彼らの奥底には、静かな暗闇で育む穏やかさ、やさしさが潜んでいます。
人間には生きている限り避けて通ることのできない苦行があります。それは僧侶が修行をするためのものだけでなく、日常レベルで誰しもが、人との関係性の中で経験しうるものです。忌避や孤独は自己の内面にも他者の内面にも横たわっています。不穏な印象に敬遠されがちな妖怪のモチーフを描くことには、人と人との見えない隔たりを経て深まる孤独に共感し、寄り添う姿勢が託されています。
鏡のように、良き理解者のように、そして守護者のように、見つめ返し静かに佇む妖怪たち。
孤独であることをあたりまえのものとして受容した上で、自分を表現する妖怪たちの揺るぎない姿がそこにあります。それは幻をこえた、たくましい精神の実存そのもののように息づいています。
2021年夏より、CGとコラージュを絡めたグラフィックのあたらしい物語が、静かに幕をあけます。