Set

変化は等しく訪れる。

三方を壁に囲まれた空間。それが何通りもつくられるグラフィックシリーズが生まれました。そこは、淡く消えゆく心象を留めるための舞台となっています。イマジネーションは潜在意識を明らかにし、現実世界の心理も編み込んで、ひとつの像を結びます。

私たちは壁の内側に篭りたい日もあれば、外へ外へと向かっていきたい日もあります。その往復の道すがら、眺める景色はどんな場所にも変化が訪れることを教えてくれます。変わらないように思える辺りの風景も、四季や天候によって日々移り変わるのと同じように、手から生まれ、変わり続ける想像の断片を捉えたい。

イメージは朧げで、いつも大抵頼りなく、残さなければどんどん消えてしまいます。変化はすべてに対して平等だとするなら、内的な要素であれ外的な要素であれ捉えて残しておきたい。その絵にたとえ社会的意義や金銭的価値がないとしても、ログのようにある時代のある日ある時に思っていたことを、のちの未来に示す私的なドキュメントでありたいと思っています。

そしてこの壁に囲まれた空間は、作家の実験の場でもあります。自然体で、空間の持つ多義性とアレンジを施すピュアなたのしさを探求しています。またデジタルなワークフローの中で構築する、既成の概念に縛られない自由なミクストメディアのあり方も模索しています。