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脆さの上をあるく

STORIES ISSUE #6
2024年10月21日

Atsushigraphの記事「脆さの上をあるく」のイメージ画像です。

盛岡で秋にひらいた個展「Recovery」の会期中、私はずっと毎日、会場であるござ九へ通いつづけました。その道すがら、調剤薬局の看板がひび割れていることにある日気づきました。干上がった土の表面のように思えたその表情。写真に収め、その場を後にした瞬間から、創作は静かにはじまっていました。

調剤薬局のひび割れた看板の写真です。これをきっかけに創作がはじまりました。
調剤薬局のひび割れた看板の写真です。こちらは表面のひびにフォーカスした写真です。これをきっかけに創作がはじまりました。

会期中、何度か弱い雨の降る日がありましたが、そのような日は静かで誰も来ない時間帯もありました。ネット環境がなくても、スマホとPCさえあればオフラインでどこででも創作ができる利点を活かし、その間、会場でこっそり制作を行いました。会場での制作と、帰宅後の仕上げを幾度が行き来して生まれたのがこのアートワーク「Cracked Road」です。

薬局のひび割れた看板から生まれたアートワーク Cracked Roadの画像です。2024年作。

ひび割れは穴をつくり、その穴の下にはまたひび割れが。その重なり合うひび割れのすぐ上をひとが歩いていきます。作り終えてみると、私生活は心理的な脆さの上に成り立っているという、今思う洞察がつくらせたもののように感じられました。

薬局のひび割れた看板から生まれたアートワーク Cracked Roadの木製パネルジークレー版画のモックアップ画像です。

しかしその脆さを受け入れることで、ひとはいつも安全な道でなくとも歩き出すことが可能になります。穴は避ければ良いし、怖い箇所は落ち着いて、ゆっくり進めば良いわけです。私たちの私生活には完全な安心もなければ、完璧な安全もないはずです。リスクが常につきまとう中でも、歩んでいける可能性と勇気を、このクラックだらけの地面にのせて伝えられたらと思いました。

Written by Atsushigraph

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