Inner Silence Epilogue 写真でめぐる『Inner Silence』展。
STORIES ISSUE #2
2022年11月7日
2022年11月2日(水)よりはじまりました『Inner Silence』展。春から綿密な準備をかさね、本ウェブサイト atsushigraph.com にて公開しておりました作品の中から「平穏」や「静けさ」に焦点をあてたグラフィックが選び抜かれた展示でした。このたび会期を終えたタイミングで、2号目となります Stories をお届けいたします。今号では、盛岡では3年ぶりとなった本展を写真とテキスト、そしてお客さまの声で振り返ります。
〈 バラガンの言葉が照らすもの 〉
『Inner Silence』というタイトルは、メキシコの建築家ルイス・バラガンの言葉に着想を得たもの。『静けさは人間の苦悩や恐れを癒す、真の薬である。』というバラガンの言葉に導かれるように、展示全体の方向性が決定づけられました。その言葉は、不穏な現代の生活にあって、日々に平穏を取り戻すための手段を気づかせてくれるようです。
バラガンの言う薬には、環境的な条件が必須であると思います。バラガン邸で言うなら、街の喧騒を遮断する部屋や、緩やかに部屋の中を移ろう木漏れ日といったものが人の心に静けさを強く印象づけます。その条件の良さが整わないときにも、静けさを補い平穏を取り戻せる効果的な装置に絵がなれないかと思っていました。さらにその絵が、それぞれに携えた物語をひとりでに語り出し、見る者を誘うようであれたらと願うのです。
幾多の環境の中に生命が集い、祈り、気づき、佇む姿に鑑賞者自身をかさねてもらえるようにと構成した本展。作品全体をとおして、平穏と尊厳に思いを巡らせる機会を作り出すことは、今後も継続させていきたい試みであり、長い間救いとなってきたバラガンの言葉へのオマージュに他なりません。
〈 プロダクトとしての視点 〉
グラフィックはすべてジークレープリントやキャンバスプリントにて製作し、ニス加工やアーカイブ表面加工が施されています。これらの加工は、絵柄の色彩に深みを与え、かつ耐光性・耐擦過性を高める効果があります。お部屋に飾られる際の細やかな機能性が意識され、一枚の絵画でありながら、長く生活をともにするプロダクトとしての視点も取り入れたデザインがなされています。
〈 デジタルとアナログが共存するキャンバスプリント 〉
今回の展示で、来場者からのご感想が最も多かったのが、キャンバスプリントの風合いについてでした。具体的には、デジタルアートがキャンバス地にプリントされることで、デジタルとアナログが共存した不思議さを感じさせるというもの。絵柄を描写するキャンバスの粗い面質が、その印象を強めているようです。
「デジタルアートをデジタルなままで見せるものが多いなかで、物質として見せていることがかえって新鮮に感じられた」
-----ご来場者さま
「デジタルアートがキャンバスなどに印刷されていると、見たときにキャンバス地の質感と絵が混ざって不思議な印象を受ける。デジタルとアナログが混ざり合っている自由さを感じた。」
-----ご来場者さま
〈 ご来場いただいたお客さまの声 〉
最後にそのほかのご来場者さまの声をご紹介させていただきます。
「初見では何を表現したものかわからないもののほうが、長く絵と向き合えると思う。この展示にはそれに近いものを一部ではあるが感じることができて良かった。ClueとReverberationsが好み。」
「(作品utopiaをみて)この絵の中に入ってみたい、訪れてみたいと思わせてくれた作品。」
「(作品Rest in PeaceとReverberationsを見比べて)一人の作家から生まれたものとは思えないくらいの振り幅を感じた。」
「次にどんなものを見せてくれるのだろうと楽しみになる作品」
「生命感を感じる。(作品gemについて)球体は細胞のようで、母なる海があり、二人の人間のシルエットは染色体のよう。全部モチーフが生命に繋がっているように感じられた。」
「Inner Silence」展は2022年11月6日(日)をもちまして会期を終えました。短い会期ながらもご来場いただいた皆さま、作品について言葉を残してくださった皆さま、本当にありがとうございました。